レジ

眠くならんくて、甘くなくて、あったかい飲物・・?
俺はその条件をSELECT構文で脳内SQLにクエリすると、その結果として自信無さげにホットティーと呼ばれる紅茶が返ってきた。俺はそれを勧めた。
でも紅茶にはカフェイン入ってるよ、え、そうなんですか。
俺は紅茶を飲まないのでその辺の知識が全く無くて初めて知った。
で結局客が求める飲物はこの店には用意されていなかったようで、仕方無しにホットティーを頼んだ。

まぁ大体そういう抽象的な質問を投げかけてくる客ってのは往々にして喋るのが好きで、もうこちらにとって興味のあるか無いか吟味の余地を与えないぐらい一方的に語り掛けたりする。

レシートはご入用ですかと訊いたらば、いるいる、これはこの時間にこの店に居た証拠になるからな、となんでそんな証明が必要なのか甚だ疑問で仕方無かったが客はそう思う事を期待していたかのように続け、うちは夫が死んでん、と突然身の回りの話へと飛び、そうなんですか、おじいさんも死んでな、家で一人暮らししてんねん、へぇ大変ですね、で裁判で弁護士にこれ見せたらな、便利やろ、なるほど確かにそうですね。

一体何で裁判が起こるのか分からんけど、とにかくこの人は寂しくて、誰かととにかく喋りたいんやと思った。
そこにいつも居た人がいなくなる、人との繋がりなんて容易に絶たれる。
なんとなくやけどその人の気持ちが分かってちょっとだけ胸が痛くなった。

で、なんとも心から笑えない哀愁に満ちた笑顔を作るもんだから、俺は出来るだけ楽しそうに笑い、ゆっくりして行って下さいと告げ、慎重にその紅茶の乗ったトレイを持ってゆっくりとテーブルへ向かう背中を見送った。


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